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みなさんこんにちは!特定技能の書類作成・人材管理システムを提供しているSMILEVISAです。
特定技能外国人を雇用する中で、受け入れ企業は外国人が妊娠や出産をした場合の対応についてご存じでしょうか?この記事では、特定技能外国人が妊娠・出産した際にとるべき受け入れ企業の適切な対応について詳しく説明しています。
特定技能外国人が妊娠・出産をした場合の手続き、在留期間、出入国在留管理庁への報告、そして注意点などをまとめました。
特定技能外国人が妊娠した場合、日本で出産はできる?

特定技能外国人が妊娠・出産した場合に、そもそも日本で出産ができるのか?という疑問が出てくるかと思いますが、結論から言えば可能です。特定技能外国人も、日本人と同様に日本国内での妊娠・出産が認められており、保証される給付金や制度も日本人と同様です。
しかしながら、外国人ということもあり本人が日本で出産がしたいか、という点は企業と外国人で話し合うべきことになっています。近年、技能実習生を中心に妊娠をした外国人に対して不利益な扱いをする企業が増加しており、法務省が注意喚起を行っています。
「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」 (婚姻、妊娠、出産等を理由とする不利益取扱いの禁止等)の第九条には下記の通り定めがあります。
事業主は、女性労働者が婚姻し、妊娠し、又は出産したことを退職理由として予定する定めをしてはならない。
2 事業主は、女性労働者が婚姻したことを理由として、解雇してはならない。
3 事業主は、その雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したこと、労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号)第六十五条第一項の規定による休業を請求し、又は同項若しくは同条第二項の規定による休業をしたことその他の妊娠又は出産に関する事由であつて厚生労働省令で定めるものを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはならない。
4 妊娠中の女性労働者及び出産後一年を経過しない女性労働者に対してなされた解雇は、無効とする。ただし、事業主が当該解雇が前項に規定する事由を理由とする解雇でないことを証明したときは、この限りでない。
技能実習生の妊娠・出産について「妊娠等を理由とした技能実習生に対する不利益取扱いについて (注意喚起)」より抜粋
また、特定技能の運用要領においても下記の記載があります。
⑫ 労働関係法令違反 64 65 外国人の就労活動に関し、労働基準法、労働安全衛生法、職業安定法等の労働関係法令について違反があった場合をいいます。外国人の就労活動に関しとは、特定技能所属機関による当該違反行為の対象者が外国人である場合をいい、当該違反行為により特定技能雇用契約や1号特定技能外国人支援計画の適正な履行を確保できないと判断されるときに該当します。例えば、36協定に定めた時間数を超えて外国人に長時間労働をさせた場合、労働安全衛生法に定められた措置を外国人に講じていない場合、外国人が妊娠したことを理由に解雇した場合などが該当します。
引用:出入国在留管理庁「特定技能外国人受入れに関する運用要領」
まずは、技能実習生や特定技能外国人に対して、妊娠や出産を理由に不当な扱いをすることは絶対にやめましょう。

妊娠の報告があった場合にまず受け入れ企業がすべきことは?
受入れ企業の担当者は、特定技能外国人の妊娠について直接申告(相談)を受ける、または登録支援機関を通じて告げられることが一般的です。その際に、すべきことは下記の通りです。
- 特定技能外国人へ、日本の妊娠・出産制度について説明をする
- 日本での出産をするか、本国でするか、就労の継続について本人の意思を確認する
- 本国への帰国を希望する際は、出入国在留管理庁への手続きを行う
上記3点について、詳しく見ていきましょう。
特定技能外国人へ、日本の妊娠・出産制度について説明をする
そもそも、特定技能外国人は日本の妊娠・出産制度について知識があまりない可能性があります。そのため、一度、特定技能外国人に対して説明をする必要があります。説明を受け、理解・納得したうえでその後の決断ができるようになるため、丁寧に説明しましょう。
日本語で説明した場合に十分理解できない可能性もありますので、通訳翻訳を手配する、翻訳された資料を用意するなどの配慮も必要です。また、妊娠した外国人本人にとって安心して話ができる担当者に対応してもらうとより親切でしょう。
異国の地で妊娠・出産するということは非常に心細いことでもあります。そのため、妊娠の報告を受けた際にはまずは温かい言葉をかけてあげることを心掛けてください。
日本での出産をするか、本国でするか、就労の継続について本人の意思を確認する
日本の妊娠・出産制度について外国人が十分理解したことを確認し、今後について下記を確認します。
- 日本で出産を希望するか
- 就労は続けるか、退職するか
まず、妊娠中・出産ともに日本に滞在を続ける場合は特に在留資格に関する手続きは発生しません。定期届出で提出する書類に、妊娠・出産についての相談があった旨を記載することになります。(こちらは通常通りの相談・苦情の範囲となるため特に特別なことはしなくてよいということです)
産休・育休に関しては、条件に該当する場合については日本人と同様に手続きを行います。
本国への帰国を希望する際は、出入国在留管理庁への手続きを行う
特定技能外国人が、日本で出産を希望しない場合は妊娠中のどのタイミングで帰国するのか、また戻ってくる意思があるかどうかを確認します。
戻ってくる意思がない場合については、随時届出で退職の届出を行うことになります。
また、日本で妊娠中は働き、出産をした上で日本に再度日本に戻って就労を続けたい場合については、在留期間内であれば出入国在留管理庁への特別な報告は必要ありません。しかし、妊娠・出産期間中に在留期日が切れてしまう場合については、あらかじめ更新を行うか、再入国する際にもう一度特定技能の在留資格申請が必要です。

妊娠した特定技能外国人に伝えるべき内容は?

さきほど、妊娠した特定技能外国人に伝えるべき内容について触れましたが、内容は下記の通りです。
①妊娠等を理由として帰国する必要はないこと
特定技能外国人が妊娠した際に、すぐに帰国しなくてはならないと勘違いすることがあります。しかしながら、日本で特定技能外国人が妊娠・出産することについて制度として認められているため、日本に残るか帰国するかについては決定権が本人にあることを説明しましょう。
受け入れ企業や登録支援機関の中には、妊娠を理由に帰国するように説得するケースも見受けられます。しかし、妊娠等を理由に帰国や退職を迫ることは違法となりますので絶対にやめましょう。
②受け入れ企業は妊娠中・出産後の技能実習生を、重量物を取り扱う業務、有害ガスを発散する場所等に就かせることはできないこと
特定技能外国人が就労する分野によっては、重いものを取り扱ったり、有害物質に触れる機会がある仕事が発生する可能性があります。しかしながら、妊娠中においては身体・妊娠に影響が出る業務に従事させることは禁止されていますので、無理に妊娠の継続に危険が及ぶ仕事をする必要がないということを説明しましょう。
③受け入れ企業は、本人が妊産婦のための保健指導や健康診査を受けるために必要な時間を確保する必要があること
日本では、妊娠中に定期的(または突発的)な検診や、保健指導が発生します。基本的に妊産婦においても病院は平日の通院が必要となりますが、1~4週間に1回~3回、程度通院が必要となることもあります。その際に、仕事をつづけたとしても、平日の通院や保健指導の時間を確保できる旨を伝えましょう。
注意点として、有給か無給かについては受入れ企業側の規定によりますので事前に説明しておきましょう。
④受け入れ企業は、本人が医師等から、妊娠中に通勤緩和や休憩の取得等に関する指導を、妊娠中や出産後に作業制限や勤務時間の短縮、休業等の指導を受けた場合は、これらの措置を講じる必要があること
妊娠している本人の体調などによっては、医師から就労に関わる制限を受ける場合があります。
具体的には、「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」が存在します。こちらは妊婦の主治医や助産師が必要事項を記載し、妊婦本人が勤務先に提出します。こちらに書かれてある内容について、受け入れ企業は適切な措置を行う必要があります。
⑤産休・育休・支給されるお金について
日本には、出産の前と後に休暇を取ることができる「産前産後休業」(以下産休)、子供が生まれてから取得できる休暇の「育児休業」(以下育休)が存在します。
産前産後休業
産前休業は、出産予定日を含む6週間(42日)前(双子以上は14週間前)から取得可能。実際の出産日が出産予定日より遅れた場合でも、遅れた分についても産前休業に含むことができます。
産後休業は出産日の翌日から始まり、産後8週間(56日)まで取得が可能。日本では、産後8週間は、出産した女性を働かせてはいけないと労働基準法によって定められています。しかしながら、本人が早期復職を希望し、医師が認めた場合のみ、産後6週間後から復職も可能です。
育児休業
育休は、母親は産後休業が終わった翌日から、父親は出産予定日から取得できる休業制度です。子どもが1歳に達するまで休業が可能となっていますが、保育所に入れないなどの事情がある場合は、事前申請により最大2歳になるまで取得が可能です。育休中は、育休終了後の職場復帰を前提として雇用保険から定められた金額が支給されます。
また、両親ともに育児休業を取得する場合は、子どもが1歳2ヶ月に達するまでに延長される「パパ・ママ育休プラス」という制度も利用ができます。

支給される手当について
健康保険や国民健康保険の加入者が出産した際、出産育児一時金が支給されます。出産育児一時金については医療機関への支払いへあてることができるため、手続きをすれば手出しで高額な出産費用を払う必要がないことを説明しましょう。また、この「直接支払制度」を利用する際は、かかりつけの産婦人科にて直接支払いができるかどうかについて事前に必ず確認しておきましょう。
産休を取得した場合、その間に給与は会社から支払われませんが(企業によっては支払われる場合もある)、支払いを受けられなかった期間は、出産手当金が支給されます。
こちらの手当は、国籍や出産の場所等に関わらず、受けることができるため、本国へ帰国して出産した場合でも手当を受け取ることができます。
手当の金額や制度の概要については、こちらのライフネット生命「産休・育休とは?期間や条件、手当、改正内容についてわかりやすく解説!」にて詳しく解説されています。
⑥健康保険と厚生年金、国民年金の免除制度について
健康保険と厚生年金については、産前産後・育児休業期間中の保険料が免除される制度があります。こちらは健康保険組合又は年金事務所で手続が必要となり、申し出は、受け入れ企業側で行います。
産前産後休業取得者申出書を日本年金機構(事務センターまたは年金事務所)へ提出し、この免除期間は、保険料を納めた期間として扱われます。
詳細については、日本年金機構の「厚生年金保険料等の免除(産前産後休業・育児休業等期間)」と、「国民年金保険料の産前産後期間の免除制度」に詳しく掲載されています。
特定技能外国人が妊娠・出産する場合の届出や在留資格について
特定技能外国人が妊娠・出産をする際に在留資格についてはどうなるのでしょうか。出入国在留管理庁への報告や、手続きが必要になる条件・タイミングの詳細は下記の通りです。
妊娠した旨の報告・相談を受けた時
特定技能外国人が妊娠をした際に、相談を受けた時点で記録が必要です。こちらは相談として記録に残し、四半期に一度の定期届出の際に提出する必要があります。
相談・苦情についてはこちらの記事で解説しています。
本人が帰国・退職した場合の随時届出の提出
妊娠・出産を理由として本人が退職・本国へ帰国を望んでいる場合に関しては随時届出という形で、退職を出入国在留管理庁への報告として行います。随時届出に関しては下記の記事で詳しく解説しています。

本人が帰国し、再入国する際の在留資格申請
外国人本人が本国での出産を希望し、一時帰国をして再入国する際は、もし在留期日以内であれば特別な手続きは必要ありません。(フィリピン国籍の場合は2か国間協定に則った手続きが発生する可能性があるためご注意ください)
しかし、在留期日が切れてしまった場合については再度、新規で特定技能の在留資格認定申請が必要となります。こちらは最初からまた申請をやり直す必要があるため、日本へ戻ってくるタイミングを本人と確認し、手続きをしましょう。
出産後は、生まれた子どもについては特定活動に切り替えることも可能
特定技能外国人が出産した後、子どもを日本で育てる場合、子どもについては特定活動が認められるケースがあります。特定技能1号については家族の帯同が認められていませんが、生まれてすぐ母子と離れることが人道的に望ましくないと判断され、許可が下りるケースもあります。
特定技能外国人が妊娠・出産する場合に受け入れ企業が注意すべきこと

特定技能外国人が妊娠・出産する際に、受け入れ企業側で注意すべきことは下記の通りです。
出産のため一時帰国する際は、在留資格の期限に要注意
受け入れ企業にとって、特定技能外国人が妊娠してしまった場合の対応についてよくあるトラブルが在留期日に関するものです。特定技能外国人の出産のため一時帰国させたら、その間に在留期日が切れてしまったということが多発しています。
在留資格申請を再度行うのは時間もコストもかかるため、可能であれば在留資格の期日に合わせて帰国する、帰国日から3か月以内であれば、在留資格の更新をあらかじめ済ませておく、という対応が必要です。
どうしてもタイミング的に難しい場合は、再度、国外から呼び寄せる在留資格認定申請が必要となります。
妊娠・出産・育児休業の期間も特定技能の在留期間に含まれる
特定技能外国人も日本人と同様に日本で出産をし、育休を取得することができますが、就労していない期間であってもこの期間は在留期間として含まれることに注意が必要です。
そのため、産休と育休併せて1~2年取得した場合は、特定技能の在留年数の上限5年にカウントされるため、その旨必ず外国人に対しても説明をしておきましょう。
しかし、2025年1月に発表された最新情報にて、外国人が妊娠・出産した場合、その期間を最長5年の在留期限から除外する措置を政府が検討していることが報道されました。これまでは在留期間に含まれていましたが、今後は妊娠出産期間が除外され、より長い期間の滞在が許可される可能性があります。
こちらについては、最新情報が入り次第また追記させていただく予定です。
参考:YahooJapanニュース「妊娠出産で外国人の在留延長検討 特定技能、就労確保で政府」
国によっては、子供を両親に預けて就労を続けるケースも多い
日本ではあまり一般的ではありませんが、海外(ベトナム等)においては、本国の両親に子供を預け、自分たちは日本で就労を続けるというケースも珍しくありません。
そのため、出産したからと言って日本に戻ってくる可能性が低いというわけではなく、実際にはそのまま就労を続けることも可能であるということを知っておくとよいでしょう。また一方で、日本での子育てを望む特定技能外国人もいます。
本人の意向に沿って、どちらを選んでも受け入れ企業側はサポートする体制が必要です。
特定技能外国人が妊娠しても、慌てず対応しましょう
以上、特定技能外国人が妊娠・出産をする際の受け入れ企業の対応方法や注意点についてまとめました。いざ特定技能外国人から妊娠を告げられても慌てないように、しっかりと事前に確認しておきましょう。
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※本記事は現時点(2025年1月)で確認が取れている情報となります。制度変更や書類の書式変更などで内容が変更になることもございますので、実際に申請する場合は必ず出入国在留管理庁や在外公館まで直接お問い合わせいただくようお願い致します。