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特定技能制度の導入によって、外国人の就労の選択肢が広がり、企業側にとっても多様なスキルや経験を持った人材を採用するチャンスが増えました。しかし一方では、特定技能外国人の転職が認められているため、より良い条件を求めて転職する外国人も増えています。
本記事では、特定技能外国人の転職に関する基本的な条件や、受け入れ企業が準備すべき必要書類、転職に伴うリスクについてわかりやすく解説します。これから特定技能外国人の転職を受け入れようと考えている企業担当者や、外国人から転職をしたいと言われた方々に役に立つ記事となっています。
そもそも特定技能外国人は転職できる?

まず、特定技能外国人について、転職ができるのか?という点について、技能実習生・育成就労などにおいては転職が一般的ではないものとされていますが、特定技能外国人に関しては転職が自由にできます。
特定技能外国人に関しては、該当する分野の資格(試験合格)が必要になりますが、企業側も受け入れの条件を満たしている限り、採用されれば転職をすることができます。
注意点として、試験に受かっていない分野や業種への転職はできません。例えば製造分野で働いているが、外食分野の企業に転職したい場合はまずは外食分野の試験を受けなおす必要があります。

特定技能外国人の転職の条件とは?
特定技能外国人が転職をする場合、いくつかの条件が関わってきます。転職先の企業がどのような条件を満たしているか、また転職に伴う手続きについて理解しておくことが重要です。
条件①現在の在留資格が有効であること
特定技能外国人が日本国内で転職をする際に最も重要なのは、現在の在留資格の状態が有効であることです。
特定技能1号の在留資格は就労先の企業ごとに紐づいており、転職先を探す期間や、実際に転職するまでに在留資格が切れてしまった場合は再度、帰国して就職活動を行う必要があります。
そのため、多くの特定技能外国人は転職をする際に、特定技能の在留資格が有効である期間内か、もしくは転職のために特定活動に切り替えて転職を行うことになります。
特定活動についての詳細は下記で詳しく解説しています。
条件②受け入れ先の企業と雇用契約を結ぶこと
転職先の企業は、特定技能外国人に対して適切な雇用契約を結ぶ必要があります。転職後も、給与や労働時間、労働条件が適切であり、入管で定められた特定技能1号の条件を満たしていることが求められます。
特定技能外国人が転職を希望する場合、就職活動を行い、転職先と雇用契約を結ぶ必要があります。また、転職先の受入れ企業側は雇用条件書等の作成が必要となります。
条件③外国人本人が、転職先の該当する分野の試験に合格し、要件を満たしていること
特定技能外国人が転職する場合、どの分野の企業に転職しても良い、ということではありません。もちろん特定技能で定められている分野のみの転職となることはもちろん、外国人本人が該当する試験に受かっている必要があります。
場合によって、特定技能外国人が該当する試験に受かっていない場合は先に試験に受かってから転職するケースもあります。もし、特定技能の分野以外の業務で働く場合は「技術・人文知識・国際業務」などの在留資格を検討することになります。
技術・人文知識・国際業務の詳細については下記で詳しく解説しています。

特定技能の転職者を受け入れる企業がすべきこと
特定技能外国人の転職を受け入れる際には、企業側も手続きが必要となります。転職する特定技能外国人を受け入れる際にすべき内容は下記の通りです。
(1) 雇用契約書の作成
転職先の企業は、新たな雇用契約書を作成する必要があります。この契約書には、給与、勤務時間、仕事内容、勤務地などの詳細が含まれていなければなりません。特定技能外国人が転職する際は、契約内容が定められた要件に合致していることが求められます。
(2) 雇用保険や社会保険の手続き
特定技能外国人が新しい企業に転職する場合、雇用保険や社会保険に関する手続きも行う必要があります。転職先企業が適切にこれらの手続きを行い、外国人が社会保障を受けられるようにしなければなりません。
(3) 在留資格変更の申請書
転職に伴い、在留資格の変更手続きを行う必要があります。既に特定技能だから在留資格はそのままでよい、というわけではなく、企業ごとに在留資格申請が必要になります。企業側は、外国人の在留資格を変更できるよう、出入国在留管理庁へ必要な書類を提出しなければなりません。
特定技能が転職される側の受入企業がすべきこと
続いて、特定技能が転職される側の受入企業がするべきことをご紹介します。
①契約終了に関する手続き
特定技能外国人が退職する場合、受け入れ企業側から退職の際に必要な手続きを出入国在留管理庁へ行います。退職に必要な手続きとしてはこちらの記事で詳しく解説しています。
また、外国人の希望に応じて、退職時の退職証明書などを発行することもあります。
②離職者のサポート
もし外国人の転職が本人の自発的離職であれば転職サポートは任意となりますが、受け入れ企業側の事情による離職の場合は、以下の対応が必要となります。
- 転職先が決まるまでの生活や情報提供支援
- 転職サイトへの登録サポート、ハローワークなどへの案内
- 退職証明書の発行
特に社宅などに住んでいる場合、急に退職となった場合に特定技能外国人が生活に困るケースもあります。会社都合での退職の場合は、できる限りのサポートをするようにしましょう。

特定技能外国人転職に伴うリスクや注意点は?

特定技能外国人の転職には、企業側にもいくつかのリスクがあります。注意点も併せて下記詳しく解説しています。
(1) 特定技能の変更資格申請中は就労ができない
転職時に、特定技能の在留申請許可が下りるまでは、就労が認められていません。そのため、転職したからすぐに働けるというわけではないことに留意しましょう。しかしながら、特定活動の在留資格を申請し、許可が下りたら就労できるケースもあります。特定活動についても、正式に許可がされるまでは就労ができませんので注意しましょう。
(2) 特定技能外国人の収入が数か月途絶える可能性があることを伝えておく
特定技能外国人が次の企業に転職・就労が可能な在留資格が許可されるまでは、数日~数か月間にわたり給与の支払いができない可能性があることを伝えておきましょう。また、寮や社宅なども転職前に使用させてもらえるのか、できないなら自分で借りる必要があることも外国人に伝えておく必要があります。
(3) 技能実習から転職する場合は要件を満たしているか確認する
技能実習で働いている企業から、特定技能に切り替えるタイミングで転職する場合は、事前に必要な要件を満たしているかを必ず確認することが重要です。技能実習から特定技能に切り替える場合の必要な要件は下記の記事で詳しく解説しています。
まとめ
特定技能外国人の転職を受け入れることは、人手不足の受け入れ企業にとって貴重な人材を獲得する大きなチャンスです。しかし、そのためには、ビザの要件や必要書類の準備、転職に伴うリスクについて十分に理解し、適切な対応をすることが不可欠です。
転職を希望する外国人と共に、円滑な手続きを進めるための準備を整えましょう!

※本記事は現時点(2025年5月)で確認が取れている情報となります。制度変更や書類の書式変更などで内容が変更になることもございますので、実際に申請する場合は必ず出入国在留管理庁や在外公館まで直接お問い合わせいただくようお願い致します。